最終更新日:2020/01/10
最終更新日:2020/01/10
派遣社員の方は最近、健康診断の案内をもらって「おっ?」と思ったことがありませんか。
『派遣健保(はけんけんぽ)』に加入している人には、とある案内がいっているかと思います。
派遣社員として働いている人にとっては大切な話題、それは「派遣健保の解散」です。
本記事では、派遣健保の解散によって、派遣社員にどのような影響が出てくるのかをわかりやすく解説していきます。
今後も継続して派遣で仕事をしていく人や、これから派遣で働こうと考えている人は特に、健康保険についてしっかりと理解しておきましょう。
目次[開く]
始めに、派遣健保について基本的なポイントを解説します。単に「派遣健保」と聞いたところで、いまいちその内容がわからないという人が多いかもしれません。
派遣健保の正式名称は「人材派遣健康保険組合」です。
いわゆる、国民の加入が義務付けられている健康保険(病気やけがに対する費用の一部を国・会社などが負担する保険)の派遣社員バージョンです。派遣健保は、派遣社員はもちろんですが、派遣社員の家族も加入できます。
派遣健保加入者は約51万人でした。ちなみに、日本全国で派遣社員として仕事をしている人は約130万人といわれていますので、少なくとも派遣社員の3分の1は派遣健保加入者だったのです。
派遣社員の多くは派遣健保によって、日常生活に欠かせない3割負担の医療費で、病院などが利用できます。
その派遣健保が2018年度末(2019年3月)で解散したため、他人事ではないのです。
では、なぜそんな大所帯である派遣健保が解散することになってしまったのでしょうか?
「派遣社員が約51万人もいれば、解散する理由なんてないのでは?」と思ってしまうかもしれませんね。
もちろん、加入者か多い分、派遣健保の収益は確保されますが、それ以上に支出(赤字)が多くなって、継続的に大きな負担となってしまっているのです。
会社でいうと「倒産」と同じと解釈してよいでしょう。
派遣健保が解散する理由は、主に以下の2点になります。
少子高齢化の影響が、派遣社員にまで影響しているということです。簡単にいってしまえば、財政状況の悪化を避けられない現実があるということなのです。
少子高齢化について、若い人は普段ピンとこないかもしれませんが、実は私たちの生活に大きく影響しています。健康保険の解散も、そのひとつなのです。
では、派遣健保を採用していた人材派遣会社はどこでしょうか?
人材派遣会社は日本全国に約81,000件もの事業者が存在します。以下が、派遣健保を採用していた大手人材派遣会社です。
一方、以下は派遣健保を採用していない人材派遣会社です。
派遣健保に加入していない人材派遣会社の特徴は、派遣業以外にも他の事業をしている会社が多いようです。
念のために、仕事を紹介されて働いてる人材派遣会社に問い合わせるか、公式ホームページなどで健康保険について確認してみましょう。
では、実際に派遣健保の解散後、加入していた派遣社員はどうなったのでしょうか?
健康保険の加入は義務ですから、保険未加入のままで働くことはできません。新しい健康保険に加入する必要があります。
派遣健保加入者の約51万人は、『協会けんぽ』に移行されました。対象は派遣健保加入者で、これまで同様に安心して働くことができます。
協会けんぽとは、主に中小企業の従業員とその家族が加入している健康保険のことです。
協会けんぽ全体では約3,900万人もの加入者がおり、これは派遣健保加入者数の約8倍もの人数になります。実に、国民の約3人に1人が加入している健康保険なのです。
協会けんぽは「全国健康保険協会」という団体が運営しており、約207万社もの中小企業が加入しています。
ちなみに、協会けんぽに加入している会社の4分の3以上が、従業員9人以下の中小企業です。
では実際に、協会けんぽに移行後の「健康保険料」はどうなったのでしょうか?
高くなるのか安くなるのか、支払う加入者にとっては負担となるのでいちばん気になるポイントですよね。結論からお伝えすると、健康保険料は”高く”なりました。
人材派遣会社から毎月支給される給料の中から、「健康保険料」が自動的に引き落とされます。その仕組みはどの健康保険も同じです。
では、その健康保険料はどうやって決まるのでしょうか?答えは、健康保険組合の「保険料率」が関係してくるのです。
保険料率は「給料の1000分の30〜1000分の120までの範囲」と法律で定められています。つまり、その範囲内であれば、独自に保険料率を決めて構わないということです。
それぞれの健康保険組合の財政状況によって、変動する仕組みがあるのです。財政状況が悪ければ健康保険料は高くなり、その反面、財政状況が良ければ健康保険料は安くなります。
ちなみに、平成30年度の派遣健保の保険料率は全国一律で9.7%でした。この9.7%を「派遣健保と派遣社員で折半」していたため、実質は4.85%の負担額でした。
協会けんぽは各都道府県ごとに保険料率が異なります。
ちなみに、平成30年度の協会けんぽの保険料率は、1番低くて9.63%、1番高くて10.61%です。
平成30年度で比較すると、派遣健保の「9.7%」よりも保険料率が低いのは「9.63%」の新潟県だけです。つまり、新潟県以外に住んでいる人はみな、必ず保険料率が上がったのです。
保険料率は毎年変動はあるものの、いきなりドーンと下がることはありません。仮に保険料率が下がったとしても、「0.02」など微々たるものだと認識していてください。
派遣健保加入者は、基本的に協会けんぽに移行されました。「高くなる健康保険料を継続的に払うのは嫌だから、どうしても協会けんぽに加入したくないけど、派遣の仕事は続けたい!」といった人もいるでしょう。
そのような方向けに、協会けんぽに加入しない方法を紹介します。
最もわかりやすい方法は、派遣健保を採用していない人材派遣会社で働くことです。先程一例で紹介したように、派遣健保を採用していない人材派遣会社は多くあります。
例えば、リクルートスタッフィングで働く場合、「リクルート健康保険組合」に加入することになります。
派遣健保や協会けんぽに比べると、保険料率が低く設定されています。平成30年度の保険料率でいうと8%で、しかも人材派遣会社が保険料を半分以上負担してくれるため、加入者の負担は3.85%です。
仮に、人材派遣会社は別々で、同じ派遣先企業で同じ時給で働いていたとしても、手取り金額は異なってくる仕組みになります。
将来的に協会けんぽがどうなっていくかが気になりますよね?
協会けんぽの保険料率については、『今後5年は10%を維持できる』と見通しを立てています。
また、協会けんぽ加入者は中小企業が中心ですので、健康保険料率が上がるとなると死活問題です。ですので、協会けんぽ側は「加入者のことを考えると10%以上は上げられない」といった認識をもっています。
ただし、協会けんぽにも苦しい事情があることは理解しておきましょう。保険加入者が増えるということは、その分医療費負担が増えるということです。
高齢者が増加している現代、今後は健康保険の保険料が下がることはあまりないと考えておいたほうがよいでしょう。
今回の派遣健保の解散によって、少なからず派遣社員に与える影響は大きいものとなります。
派遣社員の皆さんにとっては、これまで健康保険について深く考えることはなかったかと思います。ぜひ、この機会に「健康保険の現実」について理解しておきましょう。
この記事を監修した人
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