最終更新日:2020/05/07
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パートタイム労働者や派遣社員のような有期雇用労働者の方は2020年から全国で一斉に施行される『同一労働同一賃金(パートタイム・有期雇用労働法)』を知る必要があります。
先にどんな法令なのかを簡単に言ってしまうと、『正社員とパートタイム労働者・有期雇用労働者の不合理な待遇差の解消を目的』とした法令です。
しかし来年施行になるのに、いまだに同一労働同一賃金について知らない方が多いです。
この記事では、同一労働同一賃金の詳細(メリットとデメリット)、施行されたらどんな変化があるのかなどをお伝えしていきます。
全く知らない方のために、初心者にでもわかりやすくお伝えしているので、ぜひこの記事を参考にしてください。
目次[開く]
同一労働同一賃金とは、正規雇用労働者と非正規雇用労働者(派遣スタッフ、アルバイト・パート、契約社員など正規雇用以外の労働者)の間にある不合理な待遇(給与、福利厚生)の格差をなくす取り組みのことです。
厚生労働省の同一労働同一賃金のページを参照すると、以下の3つが2020年度から段階的に整備されていくことになっています。
この上記の3つを中心に、厚生労働省が主体となって進めていく法令です。
同一労働同一賃金が進むことにより、雇用形態による不合理な待遇格差を減らし、私たちが自由な働き方を納得して選択できる日本を目指すものと定められています。
同一労働同一賃金の適用は、2020年の4月1日から施行されます。
ただし中小企業の短時間労働者(アルバイト・パート)の同一労働同一賃金の適用は1年遅い2021年4月1日から施行予定です。
上記の2つのどちらかに当てはまる企業を中小企業としています。
同一労働同一賃金が施行されれば、今まで「アルバイトだから仕方がない」「派遣だから仕方ない」と非正規雇用者が諦めていた待遇差が是正されていくため、労働者に大きなメリットがあると考えられます。
この制度を進めることで、企業にはどのようなメリット・デメリットが生まれるのでしょうか?
労働者のメリット・デメリットと比較しながらお伝えしていきます。
非正規雇用者の待遇が改善されることで、非正規雇用者のやる気がアップしたり、「非正規から正規雇用へ切り替えてキャリアアップしたい!」と考える方も出てくる可能性があります。
非正規労働者の人口は、日本の労働人口の約4割を占めているため、彼らの労働意欲が上がることは大きなメリットと言えます。(2018年の労働調査によると、役員を除く日本の総労働人口5596万人に対し非正規雇用者は2120万人を占める)
また、非正規雇用者の待遇が改善されることで、非就労者の労働意欲が高まり前向きに就業する人口が増えることが期待されています。
労働人口が増えることは、人材不足で経営困難になっている企業にとってはプラスの面も大きいです。
ほかにも同一労働同一賃金の施行の中には、賃金差を是正するだけではなく、今まで正規雇用者にしか与えられていなかった社内研修などの教育機会も非正規雇用者へ提供することを促しています。
これらの教育機会を受けることで、非正規雇用者の新たな能力が発見され、その能力が業務にも活かされれば、企業経営にも大きくメリットになり得るでしょう。
同一労働同一賃金が施行されると同時に、社内の制度を1から見直す必要があり、今まで当たり前に行われてきた待遇差であったとしても、必ず不合理な差がある場合は改善しなければならない手間が最大のデメリットと言えます。
単純に賃金が高いか低いかという視点だけではなく、非常に細かなルールを確認しなければなりません。
例を挙げてご紹介します。
以下のように細かく分けて、各項目での給与や手当に差がないか確認をしなければなりません。
普段、何気なく使っている食堂や休憩室に関しても、正規雇用者しか使えない場合は、短時間労働者にも使用できるようにする義務が発生します。
短時間労働者の人数が多く、更衣室などがどうしても用意できない場合の対策を考える必要があるため、企業負担が大きくデメリットになり得るでしょう。
また、これらの待遇差をなくすよう動いた結果、非正規雇用者の賃金や手当をアップしなければならず、多大なコストがかかることは懸念点です。
社内で上手く統一することが出来たとしても、派遣会社は派遣先の企業の基準に合わせなければならない点も注意が必要です。
派遣先の基準に合わせた結果、派遣元の資金繰りが追い付かず、経営を大きく圧迫してしまうデメリットもあります。
2020年4月または2021年の4月までに、企業は社内のルールをすべて見直し、不合理な待遇差について従業員に明確に説明する準備を進めなければなりません。
もし、この法令が施行された後も、待遇差がまったく改善されなかったり、説明が不十分であると労働者側から訴えられることも考えられます。
これらの責任を負うことは企業にとって大きなデメリットとなるでしょう。
非正規雇用者と正規雇用者の間にあった賃金や福利厚生などの待遇差を埋めるために動いた結果、非正規雇用者の賃金が上がったり、今まで使えなかった福利厚生を与えられる可能性が非常に高いです。
たとえば、正規雇用者と非正規雇用者の業務内容が同一にも関わらず、賞与が正規雇用者にしか与えられていなかった場合は、非正規雇用者にも賞与を与えるか正当な理由を説明しなければなりません
単純に「正規雇用者の方が将来に期待できるから」「アルバイトや契約社員だから仕方がない」といった抽象的な説明では不十分です。
非正規雇用者の待遇改善が行われ、仮に非正規雇用者の賃金をアップしなければならない場合、企業は非正規雇用者分の人材コストを抱えきれなくなる可能性が大きいです。
そのため早い段階で、早期退職を促すなどの人員整理を行い、労働者の雇用人数を減らす動きが高まるでしょう。
そうなると、今までの業務を少ない人数で回さなければならないため、労働者に大きな負担がかかることになります。
非正規雇用者への賞与や待遇をプラスにしてしまうと、今まで正規雇用者のために蓄えられていた資本がなくなってしまうので、正規雇用で長く勤めれば必ず賃金が上がっていく、年功序列の日本のルールは大きく崩れていきます。
待遇が平等になるということは、今まで能力がなくても正規雇用者であるがために評価されてきた人たちへの風当たりは厳しくなるでしょう。
雇用形態に関わらず、成果で評価される流れができていく可能性が大きく、どのような立場でも仕事に対する責任やプレッシャーが以前よりもかかることはデメリットになり得ます。
派遣労働者の同一労働同一賃金に関しては、短時間労働者であるアルバイト・パートや有期雇用の契約社員とは押さえるべきポイントが異なります。
派遣労働者は、派遣元(派遣企業)に雇用されているものの、実際に働くのは派遣先企業です。
そのため、派遣労働者の賃金や待遇は派遣先企業で働いている正規雇用者を基準にして不合理な差がないか確認をしていかなくてはなりません。
この考え方で進めていくと、派遣労働者の派遣先が一定ではなく、派遣先企業の企業規模や業務内容によって左右されてしまうため、派遣労働者のキャリアアップが難しくなったり、不都合な事態が生じるリスクがあるのです。
同一労働同一賃金における派遣労働者のデメリットを防ぐために、派遣労働者に関しては他の非正規雇用者とは異なる視点でのルールを適用しなくてはなりません。
派遣元の企業は、派遣労働者を守るために次の2点を均等にする義務が発生します。
⇒派遣労働者は、派遣元を基準にするのではなく、実際に働いている派遣先の企業に属する正規雇用者ならびに非正規雇用者と比較して不合理な待遇差がないかを確認すること。
⇒過半数労働組合か、過半数代表者と派遣元との間で、労使協定を締結して就業環境の改善を行うこと。
(平成30年 労働者派遣法改正の概要『同一労働同一賃金』より)
簡単に説明すると、派遣先の企業を基準に同一労働同一賃金を進めるか、派遣元と労働者の間で労使協定というルールを作って同一労働同一賃金を進めるかのどちらかの方式を選ばなければならないということです。
同一労働同一賃金の施行後、事業主と労働者間でいったいどのようなトラブルが起こり得るのでしょうか?
今のうちから準備すべきこと、企業がまず考えておくべきポイントはどのようなことなのかお伝えします。
同一労働同一賃金が施行されると、非正規雇用者への賃金、各種手当、研修や教育の機会を雇用形態に関わらず提供するためのコスト、食堂や更衣室などの提供にかかるコストが膨らんでいくでしょう。
人件費中心に経営コストがかかっていくと、新たな人材を1人増やすことも躊躇され、採用が非常に厳しくなっていく恐れがあります。
採用が進まなければ、少ない人材で企業を運営しなければならず、少ない人数で売り上げを大きく上げなければ新たな人材は採用できません。
売り上げが上がらなければ、高騰した人件費が企業経営を圧迫し、どんどん負のループに陥ってしまう可能性が非常に高いです。
どのような仕組みで売り上げを伸ばし続けていくのか、少ない人材で長時間労働を避けつつ企業をどうやって運営していくのか、採用人数を多く採りにいくのではなく優秀な人材を厳選して集めていくにはどのような採用手法をとるのか?など企業の運営を抜本的に見直さなければなりません。
海外では同一労働同一賃金の考え方が既に浸透している国が多くあり、同じ業務内容であれば同じ賃金や待遇にすべきだという概念は当たり前です。
日本の労働法ではもともと、国や宗教、性別や居住地により差別をしてはいけないと定められています。
性別が違うから、宗教が違うからと言って採用をしないことはNGです。
しかし、性別や宗教が異なる人に同じ給与を与えるという考えは理解していても、雇用形態が異なる人たちに待遇差をつけてはいけないという考えまでには、日本は及んでいませんでした。
日本での同一労働同一賃金を考える時に、キーワードとなるのは『年功序列』『終身雇用』です。
日本では、新卒で採用されたら60歳や65歳の定年までずっと同じ企業で働き続けることが当たり前でした。
そのため、長く勤めるほど年功序列として給与が段階的に上がっていく、長く勤めるほど退職金が増えるといった考え方が定着していました。
しかし、誰しもが気付いているように、人口構造が大きく変わり少子高齢化が進む中で『年功序列』『終身雇用』の制度は古い考えと見なされてきました。
日本人の寿命が伸びて定年後に働きたい人が増えたとき、彼らは非正規雇用者へと切り替わってしまいます。
非正規雇用者の人口が増えると、非正規雇用者へ対する賃金の与え方についてもしっかり向き合わなければなりません。
この時代の流れから、ようやく日本は同一労働同一賃金を受け入れることを考えたのです。
欧米やEU諸外国では、日本よりも早く同一労働同一賃金の概念が定着していました。
複数の民族、宗教の人が入り混じる海外では、宗教や性別、人種によって賃金差をつけてしまうとそれは差別となってしまいます。
そのため、差別と感じた労働者が訴えれば企業が改善しなければならず、これは当たり前に行われてきたのです。
ドイツやフランスでは1時間あたりの短時間労働者の給与は、正規雇用者の8~9割と高い水準を維持しているのに対して、日本の短時間労働者は正規雇用者の6割ほどの給与水準と言われています。
イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、デンマーク、スウェーデンではどの国を見ても、短時間労働者の給与水準は正規雇用者の賃金の7割以上に位置しており、日本だけが56.6%と6割にも満たない現実を受け入れ、諸外国の対応を参考に動いていく必要があるでしょう。
この記事を監修した人
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